憐れをもよおすネトウヨのアベノマスク擁護論

 

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女子中高生にはやり始めたアベノマスクの「デコ」
  1. 女子中高生間でのアベノマスクの「デコ」流行~これにすがりつくように礼賛をはじめたネトウヨ

 女子中高生にアベノマスクの「デコ」が流行っている。ミッキーマウスなどのディズニーのキャラクター、花、猫や犬、アニメのキャラクターなどなど実に色鮮やかに絵を書いて実に楽しそうである(このような感性自体は敬服に値するが、後に述べるように衛生上は危険である)。

 この思わぬ女子中高生のアベノマスク活用法にすがりつくようにネトウヨが礼賛をはじめた。曰く、「今の若い人って本当に逞しいなぁと思う。アホなアベガー老人より生き残る力がある。」「"何でも安倍総理への批判前提のパヨ"とは雲泥の差、女子高生の方が頼もしい、未来は明るいのです!! 文句しか言わん…人として恥ずかしいと思ったほうがいいぞ!!」「アベノマスクを馬鹿にしてるだけのパヨチン・アベガーは、インスタで『アベノマスク』って検索してみたらいいよ。若い女のコはアレをリメイクしてけっこう喜んでるんだぜ。」と。

 政府による配布発表直後から漫画家の浦沢直樹氏のイラストに象徴されるように人々の失笑の対象になり、政府の全く無能としかいいようのない新型コロナウィルス対策の象徴になっていたアベノマスク。発表したのはちょうどマスク不足が深刻になっていた頃だが、全国に配布が済んだとされる6月中旬にはすでにマスクがドラッグストアなどを中心に十分出回り、全く必要のなくなったアベノマスク。しかも届けられた人からゴミや虫、カビが付着していると苦情が殺到したアベノマスク。安倍晋三以外は誰も使っておらず、自治体に大量に寄付されたにもかかわらず自治体自身が使いみちがなく困っているだけのムダノマスク。ネトウヨが礼賛しても礼賛しても送られる側にとっては迷惑以外の何物でもない無用の長物であり、税金の無駄遣いの何者でもないことが日本の民衆の間ではコンセンサスが完全にできてしまっている。しかも安倍本人がアベノマスクの使用を最近やめている…(これは安倍本人がアベノマスクが無用の長物以外の何物でもないことを自認したという意味を持つ)。

 そういう最中での、女子中高生のアベノマスク「デコ」ブームである。これにすがりついてアベノマスクをまたぞろ礼賛し始めたネトウヨに、訪問販売で売れない商品を押し付けられ何百軒もの家から断られ、やっとのことで話を聞いてくれる人に出会ったときのセールスマンのすがりつくような心情をイメージするのは私だけであろうか(もちろん、社員にこのような悪質な訪問販売を強制するブラック企業は現に存在している。そういうことをやらされている人は実に気の毒であるが、これはネトウヨの姿のたとえである)。「あ~!話をきいてくれる人がいたんだ~!」と目に涙を浮かべる彼らの姿が想像できる。

 

  2. ある ツイッターでのやりとり。

 あるネトウヨが女子中高生に流行するアベノマスクについて次の投稿をした。

「若い子の感性は素敵だ 金もマスクも貰っておいて「政府は何もしてない」などと言う情けない大人にならないで」

これに対する私の返答。「衛生上やめといたほうがいい。」

すると、次のような返答が返ってきた。

「工業製品に1%弱の不良品は当然ある 同じことは市販の全ての物品に起こってるけどいちいち報道されないだけだ」

また別のネトウヨは次のように返答してきた。

「しかも洗えばいいだけですわ その為の布製マスク まだこんなこと言ってる情弱がいるんですねぇ」

全く失笑を禁じえなかった。

 

  3. 不良品は1%?

 しかし一体何が「不良品は1%」なのだろうか?かのアベノマスクが、4月の段階からゴミ・カビ・虫が付着していると苦情が殺到していたにもかかわらずである。しかも苦情が殺到したこのアベノマスクの検品をただでさえ、業務がパンク状態になっている保健所に押し付けたのだ。

 さらにいうと、このアベノマスクは首相安部本人の発案であり、不良品が見つかってからもそのことを政府は隠ぺいしていた。

アベノマスク大量不良品の原因は安倍首相!厚労省が品質懸念も官邸が「首相案件だから早く」と命令、医療品でない東南アジア製マスクに

 https://lite-ra.com/2020/04/post-5395.html

ただただPCR検査の拡大をいっこうにやらずに国民をなだめるというよこしまな目的のためだけに配布されたアベノマスクに、そもそも清潔や衛生を求めるほうが無理というものだ。当然だが不良品が1%で済んでいるわけがない。

 作家であり医師である海堂尊氏はアベノマスクは絶対に使ってはいけないと念を押しているほどである。

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO60088530Y0A600C2000000/

 

  4. 洗えばいいだけ?

 もう一人のネトウヨがいう「洗えばいいだけ」の批判に移ろう。何が「洗えばいいだけ」なのか?もしドラッグストアなどの店頭に陳列してあるマスクに虫やゴミ、カビが混入していて店員に苦情が来たとする。その店員が客に「いや、洗えばいいだけですから」と答えたら一体どうなるだろうか?間違いなくその店の信用問題になる。

 そもそも現在マスクはどこのドラッグストアでも手に入るようになっている。鼻も覆うタイプの紙でできた、布製より気密性が高いマスクだ。そんな状態で、たとえ送られたとしても不潔極まりないアベノマスクを洗ってでも使おうという人が、いったいどこにいるというのか?実際各自治体には必要ないと判断されたアベノマスクが、山のように寄付されていて自治体自身が使い道がないので困っている有様である。

 一万歩ゆずって、たとえ洗って使えたとしても、このアベノマスクは新型コロナウィルス対策にはほとんど役に立たないことがマスクの研究者によって明らかにされている。使ったところで衛生上いっこうに有効性がないのがこのアベノマスクなのだ。

アベノマスク、布マスクも「ウィルス侵入率は100%」専門家が実験。マスク選びの注意点は?

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f080103c5b6480493cdd5e1

(かくしてこのアベノマスクを使用していたのは首相安部ただ一人であり、国会の開催中はつけていたのだが、その日の質疑が終わったら外している始末であった。最近はつけてさえいない。)

 

  4. なぜ女子中高生がアベノマスクの「デコ」を始めたのか?

 現在、一般に流通しているマスクの大半は不織布マスクといわれる。この「不織布」とは文字通り織っていない布のことで、普通の布は繊維を撚ったものを織ってできているのであるが、不織布は繊維を熱・機械的または化学的な作用によって接着または絡み合わせる事で布にしたものなのである。一般の布に対して平滑性(表面が平らなこと)で劣っている。

 布に横断幕などをつくる目的で、大きな文字を書いたり絵をかいたりするときは水性顔料を使ったポスターカラーが用いられる(これをペン状にしたものが三菱鉛筆が発売しているポスカという製品)。発色も鮮やかでしかも重ね書きができる。おそらくアベノマスクをデコっている女子中高生たちもこのポスターカラーやポスカを使っていると推測される。やってみるとわかるが、不添付マスクでこのポスターカラーを使って絵を描こうとするとほとんどうまく書けないのである。例えて言うと、医療で使われる脱脂綿に絵を描いているようなものだ。ところが、アベノマスクは布マスクなので普通にポスターカラーやポスカが使える。だからこそ彼女らは好んで使っていると思われるのである。

 このことを言い換えると、彼女らは新型コロナウィルスの予防に効果があると思ってアベノマスクを使っているわけでは全くないということである。

 

 以上、ここまでネトウヨの荒唐無稽なアベノマスク擁護論を批判してきた。何が「不良品は1%」だ?何が「洗えば使える」だ?あまりの憐れさに失笑を禁じえない。だが、女子中高生がアベノマスクを好んでデコって使っているのは事実である。発想は尊敬に値するが、衛生上危険なのには変わりがない。女子中高生のみなさん、アベノマスクを使うのはやめましょう。