生活保護と扶養照会

 稲葉剛氏のツイッターで、生活保護制度から申請者を遠ざける扶養照会をやめろ!という主張があった。

  扶養照会とは、簡単に言うと生活困窮者に生活保護を支給する前に役所の職員がその家族に「生活を支援できませんか?」と問い合わせることである。稲葉氏によるとこの扶養照会こそが、生活困窮者が生活保護を受けれられない一番のネックになっているとのことだ。そもそも、各地方自治体の役所では予算不足のためなるだけ生活保護受給者を減らすように指導される。当然担当職員たちは、生活保護支給決定の前になんとか支給しないで済むように動き回ることになる。この手段として活用されているのが扶養照会である。

 申請者の中には複雑な家族関係を抱えている人もいて、扶養照会をやるだけで家族関係が悪化してしまうという人もいる。そもそも生活保護を受けるのは恥であると風潮が政府・自民党から意図的に作り出されている。たとえば、片山さつき世耕弘成といった自民党議員はやれ「生活保護は生きるか死ぬかという状況の人がもらうべきもの」だの「生活保護受給者にフルスペックの人権を認めるのはいかがなものか」だのといってきた。いやいや、野党であった民主党政権時代にさんざん生活保護バッシングをやってきたのが自民党だったのである。

 そのせいで、「生活保護を受けるのは恥」という風潮がかなり蔓延してしまっている。昨年10月に福岡でコロナ解雇された30歳の女性が生活に困窮し、恐喝未遂で逮捕されたというニュースは記憶に新しい。この女性は「生活保護を受けるのは恥」とずっと思っていたそうだ。

 こういうことが起こるのは一体なぜなのか?政府・自民党小泉政権以降、福祉や行政サービスを徹底的に削減する政策をとってきた。公的部門を徹底的に民営化し福祉を極限的に削減してきた。この政策に貫かれているイデオロギーが社会的弱者を徹底的に排除する思想「社会ダーウィン主義」である。これはナチスダーウィンの進化論を悪用し〈社会における適者生存理論〉で、アーリア人の優生思想に基づきユダヤ人のホロコーストを正当化したのであるが、新自由主義者においては「市場における自由競争での適者生存」という理念に基づき社会的弱者を排除していくというものである。安倍や菅が好んで使う「自立・自助」とか「自己責任」とかいう言葉はこの社会ダーウィン主義の言い換えにほかならない。要するに市場原理に基づいて弱者を徹底的に淘汰するという思想である。一言でいうならば、「弱いものはさっさと死ね」ということである。

政府・自民党生活保護を目の敵にするのはこういう思想があるのだ。

 また彼らは福祉はおろか、コロナウィルス流行にともなう失業者への臨時給付金(たったの一人あたり10万円!)すらも渋る。曰く「財源がない」と。だがアベノミクスで巨大独占体に湯水のごとく金を注ぎ込み、法人税を減税する傍ら消費税を増税してきたやからが一体何をいうか!非正規雇用を拡大し人々に貧困を強制してきた連中が何をいうか!