現代のヨーゼフ・メンゲレ

  先日、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者に薬物を投与して殺害したという容疑で二人の医師が逮捕された。ALSとは、重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をもたらす神経変性疾患で、末期には全身の筋肉が動かなくなり。呼吸すらも自分でできなくなる。

 一見すると安楽死に手を貸したようにも見えるが、この二人は高齢者や障害者は早く死んだほうがいいという優生思想の持ち主であり、この自分の思想を薬物投与によって実現した疑いが濃厚なのである。しかも一人の医師大久保諭一容疑者は元厚労省医系技官というエリート。

 ニュースサイトLITERAによれば、この二人は共著を出していて、アマゾンでの本の紹介文には次のことが書いてあったそうだ。

認知症で家族を長年泣かせてきた老人、ギャンブルで借金を重ねて妻や子供を不幸に陥れた老人。そんな「今すぐ死んでほしい」といわれる老人を、証拠を残さず、共犯者もいらず、スコップや大掛かりな設備もなしに消せる方法がある。医療に紛れて人を死なせることだ。病室に普通にあるものを使えば、急変とか病気の自然経過に見せかけて患者を死なせることができてしまう。違和感のない病死を演出できれば警察の出る幕はないし、臨場した検視官ですら犯罪かどうかを見抜けないこともある。荼毘に付されれば完全犯罪だ。〉※LITERAより。

 他にも、大久保容疑者のツイッターには次のことが書いてあったという。

〈つぶれそうな会社に税金突っ込んで延命を図ってもなんにもなってないわけでしょ。もう市場から消えたらいい会社もゴロゴロある。おんなじで、老人に公費つっこんでゾンビにして、事業者におもねて、吸血鬼よろしく国民から吸い取ってますます国を貧しくしてな〉(2019年12月22日)

議員定数を若干減らすよりも、尊厳死法とか安楽死法を通した方が財政は持ち直すと思うけど。〉(2016年2月21日)

〈医療って贅沢品だと思うんですよね。なんでも「国の責任ガー」って云ってたら国も落ち目で財政赤字ハイパーインフレ待ったなしなので、支払い能力に応じたサービスでしかたないのかなと。〉(2019年5月3日)

〈第XX回24時間テレビ「愛は財政を救う」 ①国に頼らない老々介護、②決して入所者を病院に連れて行かない特養、③高い抗がん剤を使う治療を拒否した90歳をジャニーズで再現ドラマ、④ヘイトスピーチと村八分生活保護者ゼロを実現した村、⑤救急車有料化で保険料爆安の町ほか〉(2014年3月1日)

アベノミクスで、食えない老人への食事介助やら経腸栄養、高カロリー輸液などへの公費支出を止めてくれんかな。老人介護や医療費が減って消費税上げなくて済むかもよ。「最後は金目」なんで石原大臣よろしく。〉(2016年1月30日)

〈高度医療に当たる人よりも、適当なタイミングで死なせる医者が求められてるんだよ。自治体なんて後期高齢だの介護や障害福祉でまじカネないからね。〉(2019年9月26日)

〈納税者的には、老人に掛け金以上の年金をくれてやるのも費用対効果的にムダでしょうし、排泄物と汚れたリネンしか生産しない生き物は簿価1円でしょうし、まあ人権で味付けすればプライスレスなんで〉(2020年6月3日)

〈コロナで介護が滅んで老人の死屍累々になっても、別に驚かない。若い人の負担が減ればよいではないか〉(2020年4月2日)


〈老人が自粛せずに徘徊してて、てめえらが延命するために社会で犠牲をかぶってんだクソが。〉(2020年4月25日)※LITERAより。

 つまり、国の財政の無駄だから、高齢者や障害者は早く死ぬべきということだ。国家にとって必要な人間をその優劣をもって決めつけ、必要ない人間は死ね。紛れもない優生思想だ。こんな人間がALSの患者に対して薬物を投与して死に至らしめたということは己の思想を実現したと見られても不思議じゃない。また二人はこの患者の担当医でもなくSNSで知り合ったということにすぎない。いいかえると安楽死を装って自分の思想を実現したということだ。

 LITERAでも明らかにされていることだが、老人や障害者は早く死ぬべきと言っているのは何もこの二人だけではない。麻生財務相をはじめとして自民党の中にはゴロゴロいる。とにかく国家財政に負担をかけると彼らが観念している社会保障費や医療費を切り捨てたくて仕方がないのだ。他面では独占大企業には湯水のごとく金を使い、新たな利権構造を作り出しながら。福祉とか医療費とかに金などかけていられるか、それで生きられないのならば自己責任というわけだ。この二人の医師は政府の本音を実行に移したという意味がある(かのナチスは障害者や遺伝的疾患を持った人の断種を行い、アーリア民族を最優秀の民族にするためにと称して、ユダヤ人やロマ(ジプシー)などの強制収容所での大量殺戮を正当化した。そしてナチス党員の医師は強制収容所においてユダヤ人などを対象に人体実験を繰り返した。この二人の医師はこのナチスの人体実験を繰り返した医師と同類であろう)。

 麻生らはこの件に関して今のところ何も言っていないが、心のなかでは共感しているのではなかろうか?なぜならば己の本音を実行に移してくれたのだから。いや、安倍のとりまきや子飼いのネトウヨたちこそが優生思想に染まっている。彼らの思想である新自由主義がそうだ。

 社会の中で競争原理を煽り、それに敗北したものは「自己責任」の何おいて容赦なく切り捨てていく。優勝劣敗のもとに優秀なもの強者のみが生き残るという社会ダーウィニズムがそれだ。それは現時点の政府の新型コロナウィルス対策に顕著に現れている。

考えても見よう、彼らは2月に感染者が発見されてから何をやってきたか。直接は東京オリンピックを何が何でも開催するために感染者を少なく見せかけるということだが、

PCR検査すら制限し、新型コロナウィルスを封じ込めていくための医療体制の拡充を現在に至るまでも行っていない。7月に入ってから東京で一日に200人、いや300人という感染者が発生(PCR検査数が世界で158番目という少なさだから、隠れ感染者はその20倍はいるのではないか?)しても、児玉龍彦医師が国会ですべての医療資源を動員して対策をやるべきだと力説しても、実質何もやっていない。そして旅行業界や観光業界に設けさせるためのGo To キャンペーンを感染拡大もいとわず実行する始末である。ここに貫かれているものは早い話が「感染は自己責任」ということである。安倍をはじめとした政府閣僚がこうであるから、このような己の優生思想を実行に移す医師が現れるのである。